Saturday, December 24, 2005

RNA新大陸

生物学は日々変わっていきます。科学の結果は常に正しいとは限りません。歴史的に見ると結構間違っています。ぶっちゃけちゃいますと、ニュートンの力学は間違ってるし、(我々の目に見える世界でだけ近似的に成り立ちます。)原子核の周りを電子が惑星のように飛び回っているという原子モデルも間違っています。両方とも高校までに教わるものですが、残念ながら現代の物理から見ると不正確です。ただ、勘違いして欲しくないのは、だからオカルトが正しいというわけじゃなくオカルトはこれ以上に激しく間違っています。理論は予測をたてて予測どおりになってなんぼですけれど、オカルトの予測的中率はとても低いものです。正確なモデルは量子力学という複雑怪奇な理論を学ばないとわからないものなので、日常生活の上では高校で学ぶもので近似的にほぼ確かに様々な現象を説明できるのでこれらを学ぶのです。これらは数式という強力なツールを使って進む物理でさえこの有様です。生物も生態学は数式を使いますけど所詮近似式ですし、遺伝子を扱えるようになってかなり正確な実験をすることができるようになりましたが、まか不思議な生物などというものを相手にする生物学はまぁしょっちゅう間違えます。こないだも老化の原因といわれてきた活性酸素が老化とは関係がないことが証明されました。
そんなこんなで言うことがころころ変わる生物学ですが、9月2日にまたとんでもないことがわかりました。DNA上にある遺伝子ががRNAという物質に転写されタンパク質に翻訳されて効果を現す。つまり、DNAを見ればどんなタンパク質を作るか、たとえばアルコールを分解するタンパク質をつくるとかいった機能がわかる。というのが生物学のセントラルドグマという中心的な考え方で、この考え方を中心に過去50年間分子生物学という分野は進んできました。DNAさえわかればタンパク質がわかるからDNAを読み取れば生物がわかるというDNA中心の考え方です。それが書き換わるかも知れないというとんでもない発見がされました。はっきり言ってノーベル賞もんの大発見だと思います。DNAにはジャンクDNAと呼ばれるタンパク質を作らない領域が95%もあってこれは何にも役になっていないだろう。といわれていましたが、RNAというDNAの情報をタンパク質製造器(リボソーム)に受け渡す物質を見てみると、ジャンク思われていた領域から転写されてきたものだと言うことがわかりました。これによってジャンク領域だらけと思われていたDNAの70%に何らかの機能があるかもしれないということです。RNAは今までの生物学ではただ情報を渡すためだけのものだと思われてきたのですが、5年程前からRNAiという手法が話題になり、一気にメジャーになってきたところに今回の発見です。これからしばらくは分子生物学はRNAマンセーな時代になるでしょう。ゲノムプロジェクトが一段落ついて膨大な量の機能のわからないタンパク質が見つかった上に、また今度は機能が全然わからないRNAの「新大陸」まで発見されてしまいました。生物の謎が完全に解き明かさされる日が来るのはまだまだ先のようです。